注意!メンタル重視なのでとっても薄いですけど性行為描写があります。
    なので、小学生の方と、男性同士の性行為についての知識がない方、受け付けない方は即刻プラウザバックでお願いします。
    当方、何の責任も取れませんので。悪しからずご了承ください。

































 僕は山本のことが好きで。
 どうしようもなく好きで。
 だけど彼は。山本は、僕じゃない、別の人が好きで。
 僕のことは好きでも何でもなくて。
 それでも、僕は山本のことを愛していて。
 だから。この虚しさだけを残す行為は、僕が、してほしいといったことなんだ。

 ベッドサイドの灯りすら消して、
 分厚いカーテンの隙間からわずかに漏れる光のおかげで、かろうじて人の輪郭くらいは判別できる部屋。
 その中で、僕は山本に抱かれる。
 抱かれる。
 なんて、悲しい表現だろう。
 だって、山本の腕は僕に回されてなんかいなくて、ベッドについて、上体を支えているだけ。
 僕の両手だって、両足だって、彼に抱きつくことは許されていなくって、ただただ、シーツを引っ掻いているだけだ。
 奥を突かれて、高められて、熱はどんどん上がっていって、冬なのに暑いくらい。
 だけど。
 反比例して頭の中は冷え切っていく。
 冷えて、冷たくなって、その冷たい欠片が目から零れ落ちる。
 はらはら落ちて、こめかみを伝って、汗と混ざって分からなくなる。
 それでも、山本と繋がっているのだと考えるだけで、この身体は熱を孕んでいって。
 ぐ、と、奥に入ってきて、圧迫感を超えた快感が押し寄せて、思わず声が漏れそうになった。
 あわてて口に手を当て、それでも抑え切れなくて手に噛みつく。
 声は出さない、
 それが、山本から出された条件。
 口を押さえたせいで、息苦しくなって、全身に、もちろん下肢にも、力が込もって。
 山本が小さく呻いて、そして、「――――、」誰か、知らない人の名前を呼んだ。
 僕じゃなくて、誰かの。聞きなれた、知らない誰かの名前を、山本は呼んで。
 そして、僕の中に精を放って。
 その熱で、僕も溜まった熱を放って。
 声を必死で抑えて、掠れきった、息だけの音が漏れた。
 山本が僕から出て行って、そのまま身なりを整えて、部屋を出て行って。
 山本に名前を呼ばれてる誰かがうらやましいと心から思った。
 シーツに縋り付いて、嗚咽を堪えながら、思った。
 山本、ねえ「山本、」
 それでも愛してるんだ、許して、僕を。

 でも、思う。

 サミシイ。寂しいよ、苦しいよ。辛いよ。幸せなのに。これで僕は満足、してる、はずなの、に。


 仄暗い中で、僕は誰の名前を呼べばいいんだろう。



 ぼくはなきたい。



お題は群青三メートル手前さんよりお借りしました。