「六道、」
朝から布団に埋まったまま一向に出て来やしない彼に呼びかける。
返事がないので枕元まで言ってもう一度。
「ねえ、起きてるだろ、六道」
すると布団の塊がもぞもぞっと動き、中から人が、六道が、顔だけを出した。
「何ですか、雲雀さん、」
「いい加減に起きなよ。もう夜になる」
「雨・・・降ってますか?」
「ああ、まだ降ってるみたいだよ」
「じゃあ、駄目です。僕、起きられません」
「ねえ、今日はクリスマスなんだよ?」
「ええ、そうですね」
「君、あんなに楽しみにしてたじゃないか」
「そうですけど・・・雨が降ってるんでは無理です。駄目です」
「ねえ、六道」
「分かってるでしょう、雲雀さん、僕、雨駄目なんですよ。どうしても駄目なんです」
「それは分かるけど、でも、クリスマスなんだよ?」
「駄目です。雨の音聞くと、血の臭いがしそうで気持ち悪いんです」
「ファミリーをぶっ潰したって言うときの?」
「はい、あの時に雨が降ってさえいなければ大丈夫だったんですけどねぇ」
「そうしたら、晴れが駄目になってたんじゃないのかい?」
「かも、知れませんね、」
「ねえ、六道」
呼びかけて、ベッドサイドにしゃがむ。
六道から見えない位置になったポケットから菓子の袋をそっと、音を立てないように取り出し、封を切る。
「六道、こっち向いて口開けろ」
命令形で言って、袋から菓子を取り出す。
なんですかと言ってそれでもこちらに向かって口を開けた六道の口の中に、躊躇いなくずぼっと。
ポッキーを束で突っ込んだ。
「・・・っ!?」
「食べ物が口に入ってるときには喋るな、一回口に入れたものは口から出すな、常識だよ」
立て続けに言った注意を守ってか、六道は、もぐもぐと口を動かして、飲み込もうとしている様が、かなり苦労してる、ように見えてうっすらと笑みが浮かんだ。(いいじゃないか、いつもしてやられてばかりなのだからたまには仕返しをしたって!)
何とか飲み込んで六道は布団からがばりと起き上がって。
「っはあっ!なんなんですかこれは!いきなり口に突っ込むなんて!って言うか結局何食わせたんですか貴方は!」
食って掛かる六道に、笑みを浮かべたまま、これだよと言って残った1袋が入ったままの菓子の箱を見せた。
「ポッキー、ですか、」
「そう。チョコが好きって柿本に聞いた。甘いほうがいいのかと思ってミルクチョコのやつにしたけど、美味しかったでしょう?」
「はあ、確かにしましたね、チョコの味」
「あれ、美味しくなかったのかい?」
「いえ、あれだけ大量に口に突っ込まれたら美味しいも美味しくないもないですよ」
「僕が食べさせてあげたのに美味しくなかったって言うのかい、」
「いえっ!そんなことは!美味しかったですよとても!!」
「じゃあ、いいじゃない」
「良くないですよ、君のポッキーの食べさせ方は豪快すぎますって、」
「そう?」
「そうですよっ!口蓋に思いっきりぶつかりました!」
「それは悪かったね、」
「悪いなんて欠片も思ってないでしょう、雲雀さん、」
「あれ?良く分かったね」
「・・・泣いて良いですか?」
「僕の居る前でだけは止めて。うっとおしいから」
「酷いです、雲雀さん!」
僕はまた笑って。
「でも、良かったじゃない、六道、君、元気になった」
「ああ、そういえばそうですね」
「食事が用意してある。せめて一食は食べられない?」
「ええ、食べます。なんだか、本当に元気になってきましたし」
「良かった。なら起きてきて。僕は先に行って暖めなおすから」
「はい」
六道がちゃんと布団から抜け出したのを視界の片隅で確認してから部屋を出る。
パタンとクロゼットを開ける音が背後で聞こえた。ちゃんと着替えられてる。
安心して、キッチンへ入り、作っておいた料理を、完全な状態に準備を整え、ダイニングテーブルに並べる。
と、
「雲雀さん、雲雀さん!」
六道が廊下で呼んでいる。
何、そういいながら廊下へ出る。
廊下の窓の前で六道が笑顔で手をパタパタさせていて、(手招きだ、多分)
「雲雀さん!ほら見てください、雪ですよっ!」
叫ぶように嬉しそうに言った六道の横から窓の外を覗けば、確かに先ほどまで降っていた雨は雪に変わっていて。
「わぉ、ほんとだ、」
「ホワイトクリスマスって言うんでしょう!」
「うん、」
「ねえ、雲雀さん、ご飯食べたらどこかお出かけしませんか?」
「いいよ、せっかく雪だしね」
「あ、後、雲雀さん」
「何?」
「クリスマスプレゼントです、これ、どうぞ?」
「あ、ありがとう、・・・でも・・・廊下で渡すものかい?」
「あー・・・そこは・・・すみません・・・」
------------------------------------------------------
MERRY CHRISTMAS!
うわあ。落ちが微妙でもだもだしますねもだもだ!
クリスマス期間限定フリー配布文でした、