ものすっごい気持ち悪いですよ?

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 君の家に泊まって。

 いつも通り、一緒の布団に入って。

 君は僕にお休みなさいと言う。

 それはとても幸せなことで。
 僕は満たされるはずなのに。
 なにか、物足りない。

 いつもなら、僕もお休みと言葉を返して、眠りに就くのだけれど。


 何故だか今日は、君に、口付けてしまった。


 本当に何故だか分からないのだけれど、衝動で、ほとんど無意識に、そうしていた。

 君はきっと凄く驚いた顔をしているだろう。
 その驚きの中に、嫌悪感が見えたらどうしよう。そう、1度思ってしまうと不安で閉じた目を開けることができずに。
 僕はそのまま君から離れた。
 君の顔も見ることができなくて、ただ掛け布団をぎゅう、と握り締めた。

 もそりと君が動く気配。びく、と身体に緊張が走る。出ていってしまう?そう思って身を縮めた。

 でも君は、僕の頭に手を添えて、自分の方に引き寄せてキスを返してくれた。
 驚いて目を開けると、君のおっきな目は慈愛の色をたたえていて。
 ああ。
 さっきの僕の行動は許されたんだと思っていいんだろうか。嬉しくて、嬉しくて。なんだか喉の奥の方がきゅっと詰まった感じがして、不意に涙が込み上げてきた。
 君の前で泣きたくなくて、でも抑え切れなくて、ぽろぽろ、涙が溢れてくる。

 君は僕を抱き締めて、背中の辺りをさすってくれていて。
 その手の温かさと優しさに僕はもう堪え切れなくて、君に抱きついた。抱きつくというよりしがみつくといったほうが正しい状態のまま、ただ触れるだけのキスを交わして。
 とても幸せなことのはずで、実際僕は幸福感だって感じているけれど。でもどことなく哀しいような気もする。僕の目から零れ続けるこの涙は、本当に嬉しくて流れているものだろうか。そう思う程に、哀しみを感じる。嬉しいはずなのに。嬉しいのに。哀しい。本当に嬉しいのに。
 (だって僕は君が、大好き、なんだから!)
 みぞおちの辺りが痛いような違和感。これが、胸が痛むと言う感覚なんだろうか。分からないけど嬉しくて、哀しくて苦しくて。

 僕は自分から口を離して、顔を君の肩口に埋めて、泣いた。

 背中を撫でているのとは反対の手で、君は僕を強く抱き締めてくれていて。



 ・・・あ、あ。僕、が、

 「・・・っ、たの、に、」
 「、なんですか、ヒバリさん」
 「っく、・・・何?」
 「なにか、言ってましたよ。のに、ってだけ、聞こえたんですけど」
 「なんでも、無い、よ」
 「何でもなかったら口に出たりしませんよ」
 「ひっぅ、くだらない、こと、だから」
 「いいですよ、言ってください、」
 「・・・っ、僕、が女だったらよかっ、たのにって、言った、のっ」
 「ヒバリさん、女の子になりたかったんですか?」
 「違う、けど、でも、僕が女だったらもっと・・・っ!」

 言葉が続かなくて、言葉が見つからなくて。訳が分からないけれど、また僕は泣いて。君はまた背中を撫でてくれて。

 「ねえ、ヒバリさん。俺はヒバリさんが男の子でも大好きですよ」
 「ほんとに僕のこと好きなの、ずっと好きでいてくれる、の・・・?」

 思ったよりもずっとずっと弱々しい声が出た。ぼやけた視界だけど、君の目を見つめる。

 「好きですよ、ヒバリさん。大好きです」

 優しい音色だけどとても力強い、そんな声。
 ああ。涙が止まらない。

 「・・・っりがと、さわ、だ。ありがとう・・・っ」



 僕は君の胸に顔を押しあてて、夜中だというのに、声をあげて泣いた。



お題は群青三メートル手前さんよりお借りしました。