ツナ君お誕生日おめでとう!!



ver,了平&京子

 金曜の最後の授業が終わった。
 一週間終わった、明日とあさっては休みだ!
 全体的に浮かれた教室で、類にもれず、妙にうきうきしながら帰り支度をする。
 といっても、大体のものは学校において帰る。鞄に戻すものは少ない。
 筆箱と宿題のある教科のノートだけを鞄に放り込んでいると、
 「沢田!」
 「ツナ君、」
 俺を呼ぶ声がした。
 顔を上げると京子ちゃんと京子ちゃんのお兄さんが立っていた。
 「二人そろって、どうしたんですか?」
 京子ちゃんにも敬語で話してるみたいで話しづらいなぁ。
 そんなくだらないことを考える。
 京子ちゃんが「あのね、」と言いながら笑顔で俺に茶色の紙袋を差し出す。
 「沢田はあさって誕生日なのだろう?」
 「でも、日曜日だから、今日渡そうと思って、誕生日プレゼント!」
 京子ちゃんが(お兄さんとだけど)俺に誕生日プレゼントをくれるなんて!
 「わぁー!ありがとう!」
 受け取って礼を言う。
 「本当は自分だけで買いたかったんだけど、お金が足りなくてお兄ちゃんに半分出してもらったの」
 「だが、選んだのは京子だぞ!俺が言うのもなんだが良い品だ!」
 「いえ、ほんとにありがとうございます、お兄さん。ありがとう、京子ちゃん!」
 二人にそれぞれもう一度お礼を言う。
 これ、宝物にしよう、

 幸せな気持ちのまま、その包みを鞄に丁寧に収める。

 ・・・中身は、なんだかよく分からない置物だったけれど。
 (ホント・・・なんの像だろ、これ・・・)

 END



ver,ランボ

 ああもう、うるさい。
 日曜の朝なんだから、静かにしろよ。
 きんきん高い子供特有の声に若干苛立ちすら覚える。
 もっと眠っていたかったのに、完璧に目が覚めてしまった。
 それでも布団の中でぐずぐずしていたが
 騒いでいる子供、ランボが命知らずにリボーンに絡みはじめてしまった。
 ため息をついて、布団に別れを告げる。
 全く、そろそろリボーンに手を出したら何十、何百倍にして返されるって学習してくれよ。
 (そのたびに被害を被るこっちの身にもなってくれ!)
 でも、俺が止めないと誰も止めないもんな、・・・はあ。
 階段をぺたぺたと下りるが、急がなかったことが災いしたのか。
 死ねリボーン!という声と、爆発音。
 直後、何かを殴る音とともに、騒ぎ声が泣き声に変わる。
 やばい、と、駆け出したがときすでに遅く、
 ぼふ、っと鈍い音とともに煙がもくもくとたちこめた。
 まあ、こっちのほうが騒がないだけましになったかな。
 リボーンに返り討ちにされたランボがいつものごとく10年バズーカを使ったのだろう。
 しかし、大人ランボもリボーンにあっさりやられるし、そうなったら泣き出すのでうざったいことこの上ない。
 結局仲裁に入んないといけないんだよな。
 煙の薄れてきたリビングに足を踏み入れると「やれやれ、」という、聞きなれた声が響いた。
 大人ランボがリボーンを倒すことを思い出さないように、こちらに気を引く。
 「久しぶり!大人ランボ!」
 「若きボンゴレ、3日ほど前に会ったと思いますが、」
 そんなこと知ってるよ!
 とにかく、5分だ。5分頑張って話し続けろ、俺!
 「あ、じつはさあ、今日俺誕生日なんだ、」
 自分で誕生日を主張するのも淋しいが、話のネタがそれしか思いつかない。
 「そうですよね、あ、そうだ。これを差し上げます」
 「え?」
 しかもプレゼントを強請ったイタイ奴になっちゃってるよ、俺!!
 ひとまず差し出された小さな箱を受け取る。
 「あ、ありがとう、これ、なに?」
 「10年後のボンゴレに差し上げようと思っていたのですがせっかくなので若きボンゴレに差し上げます」
 結局俺が受け取る予定だったものなのか。
 「あ、中身はチョコレートですよ、」
 「ありがとう、チョコ好きだよ」
 「でしたよね、よかった」
 お互い笑って、よし、このまま5分!と思ったのに。
 「甘いものばっか食って、まだまだお子様だな、」
 背後から聞こえた赤ん坊の声と、殺気を出し始めた大人ランボの姿を確認してしまって。
 全力で頭を抱えた。

 俺の苦労が!

 END



ver,獄寺

 朝ご飯が終って。でも昼ご飯まではまだまだある。
 そんな時間に獄寺君がやってきた。
 失礼します、十代目。
 そう言って部屋に入って来た彼は何かこそこそしていて見るからに怪しい。
 「どうしたの、獄寺君」
 まあ、何を隠してるのかなんて明らかなんだけど。
 一応ここは気付かない振りをするべきだよね、
 座布団を勧めるとやはり怪しい動きで移動し、座る。
 そして、彼は俺の予想通りに「お誕生日おめでとうございます」と言って四角い包みを俺に差し出した。
 ありがとう獄寺君、といって受け取る。
 手にした途端、ずしりとした重みを感じる。
 「重…、これ、本?」
 「はい、十代目に相応しいものを選びました!」
 俺のこと考えて選んでくれたんだなあ。
 「あけてもいいかな、」
 聞くと、どうぞ!と言われたので、ぺり、と張られているテープをはがし、開封する。
 と、
 「『マフィアの全て・2』って、これ、昔リボーンにもらった本の、」
 「はい、続きです!」
 「やっぱり・・・」
 ひょっとしてリボーンの差し金か?
 明日からまた俺、これを読まされるのか?
 ちょっと憂鬱ではあったが、獄寺君が好意でくれたものだ。礼はしっかり言うべきだろう。
 「あ、ありがとう、明日から、早速読むね」
 っていうか、読まされる、が正しいけど。
 満面の笑顔で恐縮です、と言われるけれど。
 どう頑張っても俺はへらっとした無理やりな笑みしか浮かべられなかった。

 いや、祝ってくれるのはありがたいんだけどね、

 END



ver,山本
 お昼ごろ、山本が母さんに案内されて部屋に入ってきた。
 「よーツナ、誕生日だろ?とりあえずこれ、親父からな、」
 そういって、平たくて大きな包みをくれる。
 山本のお父さんから、ってことは間違いなくお寿司だろう。
 「もうすぐお昼だろ?そん時皆で食ってくれよ、」
 にこにこ、という描写の見本みたいな笑顔。
 「うわぁ、ありがとう!山本も食べていく?」
 つってもこれは山本の家のものだけど。
 「いや、実は昼から店の手伝いしろって親父に言われてるのなー、悪いけど、あんま時間無くて」
 頭をかきながら申し訳なさそうに笑って。
 「あ、あと、これな、俺からのプレゼント」
 小脇に持っていたショップバックを差し出してくる。
 山本の私物かと思ってた。
 「わ、これもいいの?開けてみてもいいかな?」
 「おう、」
 お寿司を一旦机において袋を開く。
 出てきたのはスニーカー。
 「わあ、格好良いね、これ!」
 「ツナのいまの靴、修行してぼろぼろになっちまっただろ?」
 だからそれにしたのな!と、言う彼に嬉しさがこみ上げる。
 「ありがとう、大事にするね!」
 礼を言った俺に、どーいたしましてと言って、
 「んじゃ、俺そろそろいかねーと!」
 慌しく出て行く彼を、玄関で見送って、お寿司を母さんに渡す。

 お昼ごはんと、それから、明日から新しい靴で学校に行くことが楽しみだ。

 END



ver,六道&クローム

 「沢田綱吉、」
 「ボス、」
 山本の家にお寿司が入っていた容器を返しに行った帰り道、後もうひとつ曲がり角を曲がれば家に着くという場所で後ろから聞き覚えのある少年と少女の声が聞こえた。
 あわてて振り返る。
 「骸、クローム!?」
 予想通りの姿だが、本来ならば隣町にいるはずの二人がいることに驚く。
 まさか、いまさらまた俺を狙ってきたのかとも思うが、いつもの三叉の槍はどちらも持っていない。
 (持っている紙袋やスクールバックの中に忍ばされている可能性もあるけど)
 「並盛に来るなんて珍しいね、」
 「くふふ、君に用があったもので」
 これもまた、いつも通りの笑いをして近づいてきている骸。・・・あれ、これやっぱり
 (狙われてるのかよ、俺!?)
 逃げ腰で、何、とたずねる。逃げる準備はバッチリ。何かあったら走って家に駆け込もう。
 戦闘を予測して身を強張らせる俺に、しかし
 「違うの、ボス」
 骸の陰に隠れるように立っていたクロームの声。
 「私たちはあなたを乗っ取ろうとして来たんじゃないの」
 「今日、誕生日でしょう、君は」
 ・・・展開が読めないんですけど。
 ていうか。
 「何で俺の誕生日知ってんの?」
 教えた覚えとか、無いんだけど。
 「君がボンゴレ10代目だと分かった瞬間に君のプロフィールは調べましたから」
 なんだそれ、
 「ほかにもあの時使ったランキングに入ってた奴らのモノも分かりますよ、」
 獄寺隼人も山本武も笹川了平も雲雀恭弥も。と言う彼に妙に疲れた気分で肩を落とす。もうどうでもいいや。
 「そんなことはどうでもいいんです」
 そういって持っていた紙袋をこちらにぺいっとよこす骸。
 「、なに、これ?」
 「だから、誕生日なんでしょう。クロームが誕生日は祝ってあげるものだと言ったんですよ」
 「クロームが?」
 骸の後ろにいたクロームが、おめでとう、と小さく言った。
 「ありがとう、クローム」
 そういうと、クロームはバックを胸の前で抱いて笑った。
 骸はそっぽを向いて「クロームの誕生日は12月ですよ、」と言っただけだったけれど。

 ・・・E、END?



ver,雲雀

 骸たちと別れて、家に帰り、部屋で腰を落ち着ける。
 クロームが選んだと言う包みを開けると、その中に納まっていたのは華奢なつくりのグラスで。
 (こんなの怖くて使えねー!)
 そう思いながら、一応キッチンにおいておこうと階下に下りる。
 キッチンの流しにおいた時、遠くからバイクの音が聞こえて、しかも家の前で停まった。
 が、明らかに家の前で停まったそれは、しばらくしても発車する気配が無い。
 ・・・まさか。
 心当たりが一人。
 慌てて外に向かいかけて、方向転換、部屋に向かう。
 彼だとすれば、部屋にいるはずだ。彼はいつもどうやってか部屋に不法侵入してくる。
 (どんな対策をしていようと確実に!)
 かちゃ、と、自室のドアを開ければ、そこにはやはり。
 「ヒバリさん・・・」
 「やあ、」
 思ったとおり、ヒバリさんがまるで自分の部屋にいるかのようにベッドに座って寛いでいた。
 「また窓から入って・・・しかも鍵かけてたと思うんですけど」
 「僕を鍵なんかで防ごうって言うのかい、君」
 「そうじゃなくてだから玄関から入ってきてくださいよ・・・」
 まあ、何を言ったって多分ヒバリさんは聞きやしないし改めることも無いだろうからさっさとこの件に関しては諦める。正直時間の無駄だ。
 もういいさ。俺の部屋の窓は第二の玄関で。
 諦観の念を持ちながら。彼に問いかける。
 「で、俺に何か用ですか?」
 「用が無ければわざわざ来ない」
 そう、すぱっと切り捨てた彼はポケットから小さな包みを出してこちらに放った。
 「わ、」
 落とさないように慌ててキャッチ、驚いてヒバリさんに目を向ける。
 「これ・・・!?」
 「君、今日誕生日なんだろ?赤ん坊の次の日、」
 ・・・俺はリボーンのおまけですか?
 まあおまけでもいい。ヒバリさんが覚えていてくれたなんて!
 「・・・っ、これ、開けてもいいですか?」
 いいよ、と、言って赤ん坊は居ないのかい、と、問う彼に、
 ごめんなさい今出かけてるんです、と返しながら包みを開ける。
 中からでてきたのは腕時計で。
 黒の、素っ気無いデザインが格好良い。
 リボーンが居ないならもう用は無い、帰ろうと窓に足をかけるヒバリさんに、
 ありがとうございます!と、礼を言うと、
 「君、遅刻が多いからね。それでちゃんと時間、確認しなよ、」
 振り返って、ヒバリさんはそう言った。

 END