人に触れられた気がして目を覚ました。

 薄闇に目を凝らしてみれば、パイナポーに覆いかぶさられていたなんて。
 これは何の悪夢?


 「そもそもどうやって入ってきたの!」
 トンファー、は今近くにない。ひとまずあらんかぎりの力を込めて、不法侵入者、六道骸に殴りかかる。
 あっさりと避けやがった。ああ、苛々する。
 くふふ、と笑い声。蹴りを飛ばす。
 奴は僕が振り上げた足を容易く掴んで、
 「くふ、普通に玄関扉から入ってきましたよ、」
 そう、のたまう。
 「鍵、かけてたはずだよ」
 掴まれた足にぎりぎりと力を込めながら言う。
 「そうですね、かかってましたよ」
 「じゃあ、どうして君は部屋に入ってるの、」
 「いつも通り、ピッキングですが」
 「ピッキングし辛いやつに付け替えたんだけど」
 「ええ、少し手間取りました。10秒程」
 「この犯罪者」

 ああそれにしたって、この体勢、不愉快だ。
 ベッドに横になったまま、振り上げた足を掴まえられているなんて、まるで、
 (襲われてるみたいじゃないか!)
 みたい、じゃない。
 六道のほうはその気があって侵入して来ているに決まっている!(日頃の行いだよ、)
 実際、くふふ、と笑いながら、僕の腿に手を伸ばしてきて。
 やばい、「放せ!」
 言って足を引き抜こうとするけれど、ぎり、と押さえ付けられる。
 腿に手を這わされて、ぞくり、背筋が震えた。
 ちょっと、本当に、
 「本当、やめてよ!」
 腹筋を使って起き上がり、両手で六道の腕を掴む。
 奴の手首を掴んで、力をこめて動きを止めて、これで諦めるかと思えば、とんでもない!奴は懲りずに指だけを動かして僕の腿を刺激してくる。
 「やっ、めろ、って、言ってるだろ、」
 じわじわと手から力が抜ける。六道の手を止めておけなくなって、(そもそも不本意ながらもとの力の差があるし、)六道の手が上に這い上がってくる。
 その手が性器に達しそうになって、

 「いいかげんにしてくれないかな!」

 その、六道に向かって言った、な、の部分で思い切り奴に頭突きを食らわす。
 僕の頭にも衝撃は帰ってきたけれど。
 「・・・っ痛!?」
 おでこを押さえて仰け反った六道が僕から離れていった。
 「酷いですよっ、いきなり頭突きするなんてっ!!」
 「言えた立場かい?不法侵入だけじゃなくて強姦まで罪を重ねる気だったの?」
 言いながらベッドに立ち上がり、もう一発、蹴りを喰らわせておく。
 ぎゃ、と変な声を出してぱたりと、六道はベッドにうつ伏せに倒れた。
 「早く僕のベッドから出て行ってね、変態がうつる」
 まだ朝には少し時間があるようだったがもう目が冴えてしまって眠れそうにない。朝食をたまには凝ったものにしよう、とキッチンを目指す。
 後ろから、変態は感染しませんよなんて的外れな声が追いかけてくるけれど、全て無視だ。


 キッチンに辿り着いて。

 食事の準備を始めて。


 ああ、



 どうして僕は二人分を作ろうとしているのだろう!