「痛!?」


 千種に頼まれたスーパーでの買い物からの帰り道、後ろから飛んできた何かが頭にジャストヒットした。
 ちょうど毛を逆立てている部分、犬にパイナポーと言われるその部分を狙いすましたようにがつりと衝撃が襲う。


 「恭弥さん・・・」


 パイナポー部を手でさすりながら振り返り、足元に落ちている金属棒、トンファーを拾い上げ、少し遠くに立っている彼の名を呼んだ。


 「やあ、」


 そんな、何事もなかったかのように彼は言って「買い物?」と、こちらの荷を覗き込んできた。
 「何これ」と、彼に評されたビニール袋の中身、カップラーメンたちをちらと見て、「安かったので、」フォローを入れる。


 「君たち、いつもこんなものばかり食べてるの?」
 「ええ、まあ大抵インスタント食品ですね。ヘルシーセンターにはライフラインがないので調理は無理なんです」
 「うちにご飯食べに来るかい?今日、君誕生日だろ?何かしら祝ってやろうとは思っていたけど何も思いつかなかったんだ。丁度良い」
 「はあ、」
 「僕がちゃんとしたご飯を作ってあげるから皆で来なよ」
 「分かりました。ありがとうございます」



 その時の僕の目は輝いていたに違いないと正直思う。
 まずひとつ、ご飯が食べられること。
 それからもうひとつ、彼が僕の誕生日を気にかけていてくれたことだ。きっと知らないだろうと思っていたし、(そういえばどうやって知ったのだろう、教えた覚えはない)知っていたとしても別段何もしないんじゃないだろうかと思っていたから。

 15年の内で最高の一日だ。そう思いながら僕は三人を呼びに走った。