慣れない隣町で、この僕があろうことか。
 迷って、しまった。

 いや、なんていうか。
 ただ千種に頼まれてお使いに来ただけなのに。
 帰り道が分からなくなるなんて。
 もう、誰でもいいから教えてください。
 黒曜は、どっちですか!

 ああ、もういい加減疲れてきました。
 買い物袋を捨て置きたい気分です。
 携帯、何で置いてきちゃったんでしょう・・・
 携帯なんだから、携帯してましょうよ、僕。

 はあ。並盛なんか、二度と来たくありません・・・。

 曲がり角の向こうから子供の歌声が聞こえる。
 やった、人です!
 これで道を聞けますね!

 意気揚々と曲がり角を曲がる。
 と。
 ぴぎゃ!
 悲鳴。と、足に衝撃。
 思ったより小さな子供で、うっかり蹴飛ばしてしまったようだ。
 とりあえず、道を聞きたいので、まずは下手に出ることにした。
 「すみませんね、怪我は無かったですか?」
 ひとまず、笑顔で、手を差しのべて呼びかける。(相手は子どもですしね!)
 が、ぎゃいぎゃい騒いでいたその子どもは、こちらを見てぴたり、と動きを止めた。
 (おや、)
 泣くのかと思って身構えたがしかし、ひく、と顔を引きつらせた子どもは、目を泳がせながら、
 「ラ、ランボさんはぶつかったりしてないもんねー・・・」
 そんなことを呟いてくるり、方向転換、走り始める。
 あれ、これ、逃げられてませんか、僕、
 「ちょ、待ってください、何で逃げるんですか!?」
 子どもを捕まえ、問う。
 ぴぎゃあぁ!と、泣き出したその子どもはよく見れば、(ボンゴレのところにいた子どもじゃないですか、)
 「って、ことは君、ランチアには懐いてたじゃないですか!」
 居た堪れなくなって子どもから手を離すとすさまじい速度で逃げ去って。
 「何で僕には懐いてくれないんですかー!?」
 もう、子どもの姿は見えない。
 それより!
 「せめて道を教えてくださいーッ!!」

 「もう、沢田綱吉でも獄寺隼人でも山本武でも笹川了平だろうといっそ雲雀恭弥でも構いません、」
 「道案内をしてください!」

 もう二度と、お使いなんかしません。