「恭弥さん、」
学校からの帰り道、後ろからそう声を掛けられた。
僕は立ち止まって後ろを向く。
「久しぶりだね、六道」
5月5日、ゴールデンウィークの最後の日、授業なんて当然ないけれどなんとなく学校で少し過ごしていたあとのことだった。
暑いと言うほど暑くもなくて、冷えると言うほど冷えてはいない、過ごしやすく、さわやかな風が、六道の髪をふわふわと踊らせていた。
「何か用?」
「ええ、誕生日のプレゼントを渡しに、」
そうだった。毎年この季節に訪れる僕の誕生日、それはいいのだけれど、プレゼントを渡しに来たと言うくせに六道は何も手荷物を持っていなくて、僕は少し不審に思った。
「さあ、ごらんなさい」
そう六道に促されて、六道の手が指す空間には先ほどまではなかったドアが現れていた。
「このドアは、なに、」
「これは不思議のドア。僕の能力で作り出したものです。君が行きたいと思うどこへだって連れて行って差し上げることが出来るんですよ」
「どこにでも?」
「ええ、地球の裏側だろうと、過去だろうと、未来だろうと、どこへでも」
「未来にも、いけるの?」
「ええ、ですが、未来なんか見てきたって、」
「何も役に立ちやしないね、」
「そうです、意見が合いますね」
「どこへ行こうか」
「別に僕は覗いたりなんかしませんからお好きなところへどうぞ」
「思い出の場所、とかかな?」
「そんなとこよりもっといいところがあるはずですよ」
「真っ先に頭に浮かんだ、そんなところがいいですよ」
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「いかかでしたか?」
「うん、よかったよ」
「大切なこと、思い出せたでしょう?」
「そうだね、」
「誕生日、おめでとうございます、恭弥さん」
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z a b a d a k 「T H E P E C U L I A R N I G H T」を基に作成しました。
遅くなりました。