死ネタっぽいんで注意してください。










 僕はお気に入りの服を着て、
 (まあ、制服だけれど)
 いつものように学校に行く。
 向かう先はいつもの応接室じゃなくて、
 そのさらに上にある屋上。
 いまは夏休み中で。
 それもお盆の真っ最中だから
 学校には誰一人いない。
 (校門がしまっていたけど)
 (そんなこと、僕は気にしない)

 階段には、
 ただ僕の足音だけが響く。
 「こつん」
 「こつん」
 屋上へのドアを開けると、
 つかの間さえぎられていた夏の日差しが
 ぎらぎらと照りつけてくる。
 (もう夕方になるのに)
 まだまだ暑い。
 でも確かに薄らいできたそのオレンジ色は
 これから僕がやることに
 ふさわしい色を持っていた。


 (ああ、やっぱり)
 ここが最高に良いと思ったんだ。


 いつだったか、
 あの外人と死闘を繰り広げたそこを
 ゆっくりと歩き、フェンスに手をかけて、
 ひょい。と、のりこえる。
 (外側へ!)
 すと、ん。と足を下ろし、フェンスから手をはなす。
 (風が強い)
 そういえば。
 もうすぐ台風が来るとか、
 騒いでいた群れがいたな。
 びょうびょうと。
 下から吹き付けてくる風に、
 無意識に身が震えた。
 (怖いの?)
 そんなわけが、
 あるはずはない。

 なんとなく。
 そっと、足音を殺して
 静かに、屋上のふちに立つ。
 肩に掛けているだけの学ランがばたばたと風に煽られている。
 前髪がふわふわ舞って、うっとおしい。
 その髪を、小指にかけて、わきへと、のけて。そして、

 ふ、と。
 後ろを振り返る。
 大好きな、僕の学校。

 前を向く。眼下に広がるのは、
 大好きな僕の街。

 ふあっと、肩から学ランが落ちそうになり、手で押さえる。
 これも、僕の好きなもの。

 しゃきり、ん、と音を立てて、袖から出てくるのは、僕の武器。
 大事な大事な、トンファー。

 大好きな物たちと一緒に。
 僕は飛ぶ。
 僕を、
 終わらせたい、から。

 だから。

 さようなら。 
 お元気で。

 さようならさようなら。さようなら。



 空に飛び、僕は終わる




お題はワンフレさんよりお借りしました。