10月25日、夜。黒曜センターの、紅一点、クローム髑髏に割り振られた部屋に人影が2つ近付いた。
 人影がノックをする。
 こんこんこんこんこん、
 内側から戸が開く。
 「骸様、犬、入って」
 入室を許可された少年2人は忍び込むように、す、と部屋に入った。
 いつもは騒ぐ犬も今は静かだ。
 「千種は今夕飯の片付けをしています、ですが怪しまれないよう、手短に済ませますよ」
 「はい」
 「分かったびょん」
 蝋燭を真ん中に車座になって頭を寄せる。
 「では作戦の最終確認です、犬、明日は家事の担当になってませんね?」
 「朝ご飯だけだから作戦に支障ないれす!」
 「当然、千種も明日は暇になってますね?」
 「千種の掃除担当は今日の私と代わりました」
 「じゃあ平気ですね、明日の昼間は犬、千種とどこかに出かけていてくださいね」
 「おっけーびょん」
 「クローム、必要な物は全て購入済みですね?」
 「はい、クロゼットにしまっています」
 「すみませんね、千種が絶対入らない部屋はここしか思い付かなかったので、」
 「いえ、構いません」
 「では、明日は作戦通りに。良いですね?」
 「分かりました」
 「了解びょん!」





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 10月26日夕暮れ時、住みかに(不法に)している廃墟に辿り着く。
 今日は1日中犬に連れ回された…なんだったんだろう。めんどかった…骸様が出かけてきなさいって言ったから出かけたけど。
 疲れた…シャワー浴びてとっとと寝よう。
 楽しかったと無駄に跳ね回りながら言う犬。疲れないんだろうか。まあどうでもいい、考えんのめんどい。
 リビングルームとして使っている部屋に足を踏み込む。
 と。
 ぱあん、破裂音。ふわり、飛んでくる綺麗な紙屑。Buon compleanno!、3人からかけられる声。質素ながら飾り付けられた室内。少し豪華な料理の乗せられたテーブル。
 誕生日おめでとう?
 …もしかして、俺今日誕生日なのか?
 …誕生日なんて、自分でも忘れてた。
 「あれ?柿ぴ、嬉しくないれすか?」
 あまりにも驚いて固まっていたら、犬がのぞき込んできた。
 「わ、」
 思わず後ろに退く。
 「もしかして、嫌、だったの?」
 きゅ、と胸元で手を握ったクロームが不安そうに聞いてくる。
 「いや、そんなことない、けど」
 「けど、…なんですか?」
 骸様まで珍しく戸惑っている。
 「まさか祝っていただけるとは思っていなかったので、驚いただけです、」
 言うと、犬とクロームは勿論、骸様まで目をきらきらさせて、じゃあ、と期待を込めた声を出す。
 「嬉しいです、ありがとうございます」
 3人は顔を見合わせた後笑顔を向けてきた。
 「Buon compleanno!」




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 千種、はぴばー!!