遅くなってしまった。


 家までの道を最高速度で走り抜ける。
 すれ違った人が振り返って何事かと見てくるけど、そこらへんは気にしない!

 とにかく走って、走って、ようやく家が見えてくる。
 マンションの最上階、自宅のリビングに灯りが灯っている。
 それを見てマンションに飛び込む。

 部屋に入って、「ただいま、恭チャン!」リビングに行く。

 あれ。いないなあ。

 電気も付けっぱなしで。こんな時は。
 がちゃり。ドアを開けて寝室に入る。

 いた。

 ただひとつだけぽつりと置いてあるベッドの上に恭チャンはうつぶせに寝ていた。

 「恭チャン、おきてる?」

 聞くと、恭チャンはもぞもぞと寝返りをうって向こうを向いてしまった。

 「怒ってる?」
 「怒ってる」
 「ごめんね、遅くなっちゃって」
 「知らない」

 確かに今朝、早く帰ることを約束させられたが。
 怒らせてしまったみたいだ。

 「恭チャン、」

 呼びかけて、ベッドの側に寄ると反対側のほうへ避けられた。
 これは結構傷ついたよ恭チャン・・・。

 空いた、ベッドの隙間に入り込んで、「恭チャンってば、」

 「痛っ!?」

 ベッドから転がり落とされた。結構痛い。

 しばらく床をごろごろして痛みを紛らわせて。

 「ねえ、恭チャン、ごめんってば、」
 「知らないよ」
 「どうしたら許してくれますか恭チャン」

 思わず敬語になって尋ねると彼は。

 「明日こそ早く帰ってきて」

 わかりました、わかりましたとも。明日はたとえ正チャンが何を言おうと早く帰ってきて差し上げようじゃないか。




 ちなみに何で早く帰ってきて欲しいのかを後日聞いたら、ご飯を一緒に食べたいからなんてまた可愛い返答が帰ってきて。
 思わず抱きしめちゃったよ。